欧米で主流の雇用方法である「ジョブ型雇用」ですが、近年日本でも導入する企業が徐々に増えてきています。なぜそのような動きが起きているのでしょうか?今回は、ジョブ型雇用の概要やメリット・デメリット、導入のポイントについてのお話です。
目 次
1.はじめに
2.ジョブ型雇用とは?
3.ジョブ型雇用のメリット
4.ジョブ型雇用のデメリット
5.ジョブ型雇用導入時に押さえるべきポイント
6.まとめ
1.はじめに
昨今の社会情勢の変化に伴い、働き方や雇用のあり方に対する考え方も大きな変化や多様性が生まれてきています。ジョブ型雇用を導入する企業が徐々に増えてきているのも、その一環と言えるでしょう。欧米では主流のジョブ型雇用ですが、日本で一般的に行われてきた採用方法とは何が違うのでしょう?また、導入した場合のメリットやデメリットはどのようなものがあるのでしょうか?今回は、ジョブ型雇用の基本とメリット・デメリット、導入の際のポイントなどについて詳しくお話します。
2.ジョブ型雇用とは?
ジョブ型雇用とは、特定の職務を行うために必要なスキルや経験、資格などを持つ人材を採用する雇用方法です。主に欧米で主流の雇用方法で、今の日本の企業はほとんどがメンバーシップ型雇用を行っています。しかし、高度な専門職の増加やコロナ禍以降のリモートワーク普及、経団連からの導入推奨の提言などを受け、近年ではジョブ型雇用を導入する企業が増えつつあります。
ジョブ型雇用にはジョブディスクリプション(職務記述書)が用いられ、職務内容や職務権限、必要なスキルや経験、待遇などが詳しく記載され、その記載内容に沿って業務をする他、評価基準にも使われます。
3.ジョブ型雇用の4つのメリット
ジョブ型雇用を導入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?以下、4つのメリットを解説します。
① 専門性の高い人材を獲得できる
ジョブ型雇用で人材を募集する際に使用するジョブディスクリプションには、職務内容や待遇はもちろん、必要なスキルや経験、資格も詳細に記載します。また、ジョブ型雇用で応募してくる求職者側は「自分のスキルや経験を最大限に発揮できる仕事に就きたい」と考えている人が多く、企業側と求職者側のニーズが合致し、求める分野に特化した専門性の高い人材を獲得できる可能性が高まります。
② 成果に応じた評価ができる
社員ごとの役割や達成すべき目標が明確なので、ズレやブレが生じることなく公平な評価をすることができます。人事評価は給与等の報酬に直結する部分でもありますので、仕組みがシンプルかる公平であることは社員からの納得を得やすく、不安・不満をなくすことができます。また、評価に要する時間が短縮され効率化にもつながります。
③ 採用のミスマッチを防ぐ
職務内容や目標、必要なスキルなどを詳細に記載して求人を出すので、求職者は企業側に求められていることや自らがすべきことに対する理解度があがります。そのため、入社後に「思っていた仕事と違う」という認識のズレが起きにくく採用のミスマッチの防止に役立ちます。
④ グローバル化の促進
少子高齢化による生産人口の減少を補うべく、外国人の採用や海外での事業展開を視野に入れる企業は増えてきています。こうした社会情勢の変化に対応るためにも、グローバル化は日本企業の課題の一つと言えるでしょう。主に欧米で主流のジョブ型雇用を導入してグローバルスタンダードに合わせることは、ビジネスチャンスの拡大や人材の確保にも繋がるのです。
4.ジョブ型雇用の3つのデメリット
次に、3つのデメリットを紹介します。
① 業務・人員配置の柔軟性が低くなる
従事する職務内容や勤務地、給与などはジョブディスクリプション通りですので、それ以外の業務をしたり部署への異動したりすることは原則としてありません。そのため、記載のない業務に関しては「これは私の仕事ではない」という思考に陥ったり、必要な人事異動ができなかったり、仕事の柔軟性が低くなる可能性があります。
② 採用の難易度が上がる
専門スキルを持った人材に対してピンポイントで募集をかけますので、同じような事業を行っている他社との競争率が必然的に上がります。また、欠員が出た場合は同様の条件で再度募集をかけなければならず、必要な時に十分な人材を揃えることができないケースも考えられます。
③ 転職のリスクがある
専門的で高いスキルを持つ人材は、自社以外でも引く手あまたであることは少なくありません。自社へのエンゲージメントが低い場合や、同じ職務内容で自社よりも環境や条件に魅力を感じる職場を見つけた場合、他社への転職リスクがありますので、それらを意識した人材管理が必要とされます。
5.ジョブ型雇用導入時に押さえるべきポイント
実際にジョブ型雇用を導入する際には、どのようなことに気を付ければ良いのでしょうか?ここでは、導入時に押さえるべき4つのポイントについてお話します。
① 職務を定義する
まずは、ジョブ型雇用を適用する目的や部門、職務内容などを明確にすることから始めましょう。従来のメンバーシップ型からの切り替えを一度に行ってしまうと社内に混乱が生じてしまう場合がありますので、まずはジョブ型雇用がより適している職務に絞って導入することをおすすめします。各部門へのヒアリングの実施や採用計画の確認を行い、自社に合う採用の形を見定めます。
② 評価制度を整える
メンバーシップ型雇用では、職能給表に基づいた給与、内部公平性重視の貢献や年功に応じた賞与、年功序列による昇進が一般的です。一方ジョブ型雇用は、成果に対する定量的な評価が求められますので、職務の大きさやレベルで等級を設定したり、目標に対する達成度を数値などで可視化できるようにしたり、評価制度を整えることが必要です。
③ 解雇条件を明確にする
職務を前提に社員を雇用するジョブ型雇用では、当該職務がなくなった場合には解雇となるのが一般的です。しかし、現在の日本における解雇は「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は無効と判断されます(労働契約法第16条より)。職務の終了や能力不足の基準など、ジョブ型雇用特有の解雇条件を明確にしておくとよいでしょう。
④ ジョブデスクリプションを作成する
ここまでの準備を踏まえて、ジョブ型雇用の必須ツール・ジョブディスクリプションを作成しましょう。いかにシンプルかつ明確で詳細なジョブディスクリプションを作成するかが、採用の成否を決めると言っても過言ではありません。主な記載項目は以下の通りです。
・職務内容
・職務権限
・職務責任範囲
・必要なスキルや経験
・給与や待遇
6.まとめ
ジョブ型雇用は、専門性の高い人材の雇用に強く、また、グローバル化や生産人口の減少からさらにニーズが拡大していく雇用方法である一方で、日本が長年築いてきたメンバーシップ型雇用からの方向転換はまだ難しい部分があることも否めません。自社の現在の状況や事業戦略に合わせ現行のやり方とのハイブリッドで運用していくなど、導入の見極めは慎重に行うことが大切です。導入を検討している、または、ジョブ型雇用が気になっているという方は、ぜひ本記事の内容をご参照ください。
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