新たな雇用の形と共に徐々に広まりを見せている「ジョブディスクリプション」をご存じですか?本記事では、注目されるようになった背景や導入の目的の他、導入のポイント、メリット・デメリットについて詳しく解説しています。
目 次
1.はじめに
2.ジョブディスクリプションとは?
3.ジョブディスクリプションの目的
4.ジョブディスクリプションのメリット3選
5.ジョブディスクリプションのデメリット3選
6.ジョブディスクリプション導入時に押さえるべきポイント
7.まとめ
1.はじめに
人事・採用シーンで聞かれるようになった「ジョブディスクリプション」をご存じですか?日本ではまだあまりなじみのないものですが、近年のグローバル化や個人成果主義の広がりにより、実は導入する企業がじわじわと増えてきているのです。しかし、「ジョブディスクリプションって何?」「どうして導入する企業が増えているの?」と、まだまだ知らないことだらけという採用担当者の方も少なくないのではないでしょうか?本記事では、ジョブディスクリプションの概要や目的、導入のメリット・デメリットなどについて詳しく解説します。
2.ジョブディスクリプションとは?
募集をかける職務についての内容を詳しく記載した文書の事を指し、日本語では「職務記述書」という名称で呼ばれることもあります。以下のような項目について詳細に記載するのが一般的です。
・職務内容
・職務権限
・職務責任範囲
・必要なスキルや経験
・給与や待遇
募集要項とよく似ているように見えますが、実は作成の目的が大きく異なります。募集要項は求職者に対して企業が提供する条件や待遇、求める人材像を伝えるのが目的であることに対して、ジョブディスクリプションは職務内容を明確化して適材適所な人材配置をするのが目的で作成するものです。
主に欧米諸国で使われてきた採用ツールの一つですが、近年日本国内でも、個人の成果に基づいて評価・報酬が決まる「ジョブ型雇用」の増加に合わせて導入する企業が増えてきているのです。
3.ジョブディスクリプションの目的
ジョブディスクリプションを導入する主な目的は以下の4つです。
① 採用のミスマッチ防止
職務の内容や目標などを詳細に記載して求人を出すので、求職者は企業側に求められていることや自らがすべきことに対する理解度があがります。そのため、入社後に「思っていた仕事と違う」という認識のズレが起きにくく採用のミスマッチの防止に役立ちます。
② 業務の生産性の向上
社員それぞれの役割がはっきりするため適材適所の人員配置が可能となり、また、個人の課題や目標が明確なので各々自分のすべき仕事に集中できます。結果、効率的に業務を進めることができ生産性アップが期待できます。
③ 透明性の高い人事評価の実施
ジョブディスクリプションには行うべき職務内容や目標、必要なスキルが明確かつ詳細に記載されているため、その内容を達成できていたか否かが評価基準となり、透明性の高い人事評価を行うことができます。このような公平で客観的な評価の実施は、社員の企業に対する不満要因を取り除くことにも繋がります。
④ 社員のスキルやモチベーションの向上
目標や必要とされるスキルが明確なので、社員それぞれが自らが目指すべき方向性が分かりやすく、また、目標達成に向けての自己プランが立てやすくなります。これにより、スキルアップや業務に対するモチベーションの向上が見込めます。
4.ジョブディスクリプションのメリット3選
ジョブディスクリプションを導入した場合、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?以下3点を紹介します。
① 自社の求める人材の採用に繋がる
業務に必要なスキル・経験の詳細を記載しているので、条件にマッチした求職者に対して「自分のスキル・経験が生かせる職場だ」と強くアピールすることができます。結果、自社が求めるスキル・経験を持つ求職者へのアプローチ力が強化され、ターゲットからの応募を獲得しやすくなります。
② 専門人材を育成しやすい
総合職のように仕事内容が多岐に渡る場合の育成とは異なり、基本的にはジョブディスクリプションに記載した職務内容や必要スキルに合わせて人材育成を行いますので、専門的な知識・スキルをより深めたスペシャリストの育成が可能です。
③ 公平に評価できる
採用選考時も、採用後の人事評価時も、基準が明確にされているためズレやブレが生じることなく公平な評価をすることが可能です。特に人事評価は給与等の報酬に直結する部分でもありますので、仕組みが分かりやすく公平であることは社員からの納得を得やすく、不安・不満をなくすことができます。また、評価に要する時間が短縮され効率化にもつながります。
5.ジョブディスクリプションのデメリット3選
メリットがあれば、デメリットも存在します。ここでは、考えられる3つのデメリットを紹介します。
① 仕事の柔軟性が低くなる可能性がある
ジョブディスクリプションにより採用した人材は、基本的にジョブディスクリプションに記載してある業務を行い、また、それ以外の部署への異動なども原則ありません。したがって、記載のない業務に関しては「これは私の仕事ではない」という思考に陥ったり、必要な人事異動ができなかったり、仕事の柔軟性が低くなる可能性があるのです。
② 幅広いスキルを持った人材が育ちにくい
職務に必要なスキル・知識に絞って育成を行うため、幅広いスキル・知識を持つ人材の育成には適していません。企業が安定して経済活動を行うためには、専門人材だけでなく広範囲に知見を持つオールラウンダーも必要不可欠です。ジョブディスクリプションを導入する場合には、組織のバランスを鑑みて適用の範囲を決めることが大切です。
③ 作成や運用に手間がかかる
新たにジョブディスクリプションを導入する場合、採用計画とのすり合わせや記載する職務内容を網羅するためのヒアリングなど、一つの書類を作成するだけでも多くの労力がかかります。また、作成したものは定期的な見直しを行い更新をしていく必要がありますので、作成にも運用にも手間がかかるのがデメリットの一つです。
6.ジョブディスクリプション導入時に押さえるべきポイント
実際にジョブディスクリプションを導入する際には、どのようなことに注意したらよいのでしょうか?ここでは、導入時に押さえたいポイントを3つ解説します。
① 職務内容の網羅性を重視する
ジョブディスクリプションで採用した社員は、そこに記載されている職務内容に基づいて業務を遂行します。それと同時に、「記載のない業務は担当外である」という意識も芽生えやすいため、従事してもらいたい職務内容は抜け・漏れなく網羅性を重視して作成することが大切です。
② 現場スタッフへのヒアリングの実施
網羅性と同じくらい重要なことは、記載内容と実際の業務との差異が出ないようにすることです。そのためには、現場スタッフへのヒアリングがおすすめです。アンケートやインタビューを実施して職務内容を明確にすることで、差異なく記載することができます。その際は、責任や権限の範囲、必要なスキルなど他の記載事項も合わせて確認しましょう。
③ 定期的に見直す
事業の拡大・縮小や社会情勢の変化などで、組織や職務内容に変更が生じることも少なくありませんので、そのような変化があった場合にはジョブディスクリプションの内容を見直す必要があります。例え大きな変化はなくとも、運用している中でフィードバックしてより効果的な内容にブラッシュアップしていくことも大切です。定期的な見直しを図り、より良い運用を継続しましょう。
7.まとめ
ジョブディスクリプションは、元々は欧米スタイルの採用ツールでしたが、専門職の需要が高まる日本国内でも注目が集まり導入する企業が増えてきています。適材適所な人員配置で生産性アップや採用のミスマッチ防止、評価基準の明確化など、多くのメリットを生む一方で、仕事の柔軟性低下や導入・運用の手間など把握しておくべきデメリットも存在しています。自社の採用計画や求める人材と照らし合わせた上での導入をおすすめします。導入の際には、今回紹介したポイントなどもご参考になれば幸いです。
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