
目 次
1.はじめに
2.退職代行とは?
3.退職代行業者の主な形態
4.連絡が来た時に企業がすべきこと
5.退職代行対応でよくあるトラブルと対応策
6.まとめ
1.はじめに
2.退職代行とは?
3.退職代行業者の主な形態
退職代行業者には、主に以下の3つのタイプがあります。それぞれ法的権限や交渉範囲が異なるため、企業側としても適切な対応が求められます。
①民間業者(一般企業)
いわゆる「退職代行サービス」として最も多く利用されているのがこのタイプです。法人または個人事業主として運営されており、弁護士資格を持たないスタッフが対応します。サービス内容は、退職の意思を企業に伝えること、退職届や私物の送付・回収などの手続き支援に限られます。有給休暇の取得交渉、未払賃金や残業代の請求など、非弁行為となる交渉行為を行うことはできません。
②退職代行ユニオン(労働組合)
「退職代行ユニオン」は、労働組合法に基づく団体交渉権を有しいる労働組合の一種です。民間業者と異なり、企業に対して有給休暇の取得、退職日や未払賃金の精算方法についての交渉を合法的に行える点が大きな特徴です。団体交渉申入書などの正式な文書が届いた場合、企業は正当な理由なくこれを拒否することができず、応じなければ「不当労働行為」とみなされるリスクがあります。
③弁護士(法律事務所)
弁護士が運営する退職代行サービスは、法的な裏付けと正当性を備えた、最も信頼性の高い手段です。退職の意思伝達に加え、未払賃金の請求、有給休暇の取得交渉、損害賠償請求、内容証明の送付など、法的交渉全般を代行することが可能です。
企業としては、通知書や受任通知などが弁護士名で届いた場合、内容を精査し、必要に応じて法務部門や顧問弁護士と連携して対応することが重要です。対応を誤れば、訴訟リスクや企業イメージの低下にも繋がるため、慎重かつ冷静な対応が求められます。
4.連絡を受けた際に企業がすべきこと
退職代行サービスから突然の連絡が来た場合、企業側が戸惑うのは当然です。以下の3つのステップに沿って、落ち着いて対応しましょう。
①本人確認
退職は本人の意思によって成立するものです。まず最初に行うべきは、その連絡が「本人の明確な意思に基づいているかどうか」を確認することです。退職代行業者が本人の同意なく企業に連絡しているケースはほとんどありませんが、特に以下のような点を確認しましょう。
・本人の署名・捺印がある退職届や委任状が添付されているか
・メールの場合は、本人のメールアドレスからも連絡が来ているか
・退職理由や退職希望日など、本人しか知り得ない情報が含まれているか
書面で正式な退職届が送付されている場合、その内容を確認のうえ、受理した日から原則2週間後には退職が成立することを念頭に置いて対応を進めます。
②業者の種類を把握
次に、その退職代行を行っている業者の形態を把握することが重要です。もしも団体交渉の申し入れがあった場合には、その組織が労働組合として正当な資格を持っているかも確認する必要があります。組合名や連絡先、代表者情報、団体交渉の趣旨などが正式な文書として届いているかどうかが判断材料となります。弁護士を名乗る相手からの連絡であれば、書面上に「弁護士法人名」や「登録番号」などの記載があるかを確認し、必要に応じて顧問弁護士や法務担当と連携して対応するのが良いでしょう。
③冷静かつ丁寧な対応
退職代行の連絡を受けたときに人事担当者として大切なことは、感情的にならず、落ち着いた姿勢で対応することです。どれだけ突然の連絡であっても、退職は労働者の正当な権利であり、原則として企業が拒否することはできません。対応にあたっては、以下のような実務面の確認を行いましょう。
・退職日とその扱い(最終出勤日、有給消化など)
・業務の引継ぎ状況や担当の確認
・貸与物(PC・制服・IDカードなど)の返却方法
・会社の備品や機密情報の取り扱い
・源泉徴収票や離職票の送付先
5.退職代行対応でよくあるトラブルと対応策
退職代行の対応に関しては、特に以下のようなトラブルが頻出しており事前に対応方針を定めておくことが混乱防止と法的リスク回避につながります。
①有給休暇の消化
退職代行の利用者の多くは、「最終出勤日=退職日」とするのではなく、有給休暇を全て消化してからの退職を希望する傾向にあります。しかし、企業側に有給申請が正しく届いていない、もしくは本人とやり取りできないことで、実際の退職日を巡って齟齬が生まれるケースが多く見られます。
<よくあるトラブル例>
・書面に有給取得希望日が書かれていない
・有給残日数が制度上の上限を超えている
・業務都合で有給取得を調整したいが、本人と連絡が取れない
<対応策>
・退職届や業者からの連絡に「有給を使用して○日を退職日としたい」と記載があるか確認する
・会社の就業規則・有給取得ルールをもとに判断を文書で通知する
・労使間で確認が取れないままの取り扱いが不安な場合は、顧問弁護士や社会保険労務士に相談する
②貸与物の未返却
退職代行を通じた退職では、本人と直接やり取りせずに退職日を迎えることが多いため、会社が貸与した備品がそのままになってしまうケースがあります。業務用ノートPC、携帯電話、ICカード、制服、名刺、書類など、機密性や金銭的価値のある物品の未返却は重大な問題になりかねません。
<よくあるトラブル例>
・PCやスマートフォンに社内データが残ったまま返却されない
・社員証や入館証がそのままになっており、セキュリティ上のリスクが生じる
・退職者の引越し等で、郵送先住所が不明
<対応策>
・退職代行業者を通じ、返却すべき物品一覧と返送先、返却期限を記載した書面を送付
・内容証明郵便や書留など記録が残る手段で通知を行い、履歴を残す
・返却がなされない場合に備えて、貸与契約書や誓約書の内容を事前に整備しておく
③引継ぎが行われないまま退職
本人との直接面談や引継ぎの場を設けることができず、担当業務の進捗やノウハウがブラックボックス化してしまうリスクがあります。特に業務の属人化が進んでいる場合は、チーム全体に混乱を与える可能性が高くなります。
<よくあるトラブル例>
・顧客対応中の案件や商談情報が不明
・担当していた業務フローやアカウント管理が分からない
・業務の進行状況や社外対応の履歴が残されていない
<対応策>
・普段から業務マニュアルや業務日報などを整備しておく
・社内のグループウェアやチャットツールを活用し、業務内容や案件情報の可視化を行う
・万一の退職に備え、重要な業務や顧客情報はチーム単位で管理する運用体制を構築する
このようなトラブルは、退職代行利用者に限らず、突発的な退職時に発生しがちな課題でもあります。企業としては、事前準備と記録を残す対応が最も重要な防止策となります。
6.まとめ
退職代行の利用は、労働者にとっては退職のハードルを下げる手段ですが、企業にとっては突然の人材流出や業務の混乱を招くおそれがあります。人事担当者としては、制度面の整備とともに、日頃から従業員との信頼関係を築き、早期の不満把握・ケアを行うことが重要です。
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